Double Famousの新しいアルバムの曲解説を作曲者それぞれが書いたんですがこれが結構おもしろいものになってます。
このコメントを書くにあたって事前に打ち合わせとかしたわけではなく、それぞれのコメントを見ながら書いたんでもないんですが、みんなそれぞれに独特な文章を書いてきました。音楽を言葉で表そうと思うと、いきおい音楽から一度離れなければならない、ってことがよく分かります。ある人は短編小説風、ある人は散文詩風、またある人は抽象的なコラム風。この文章たちからアルバムの音の雰囲気や世界観が伝わるんじゃないでしょうか。11の楽曲によりそう11編の物語。物語の順序はアルバムの曲順通り。本編の前の予告編として読んでもらえればと思います。
9月24日のイベント"Brilliant Colors"は、通常のライブイベントとはちょっと違った僕らDouble Famousの世界観に触れてもらえるイベントにできるといいなと思ってます。詳細はもうすぐ発表。乞うご期待!
1)熱波(作曲+文:藤田文吾)
そう、たしかこうだった。
防波堤の上で車座になって将棋を打つ漁師たち。その傍らには、けっしてチューニングの合うことがないラジオが息も絶え絶えに、熱波の到来を告げる。一人の漁師の頭の中にカンペキな気圧配置が浮かび上がる。
「季節だな...」気温が5度上がる。大粒の汗が頬を伝い顎から滴り落ちようとしていた。汗は一つの駒に慎重に狙いを定め、正確に左斜め上に命中し砕け散った。駒は中を舞い裏返った。漁師たちはどよめいた。「そんな手が...負けたな...」
そうそう、そうやって重く熱い空気は、ゆっくりと腰を上げ、じわじわと列島に襲いかかろうとしていた。それは落語的結末を向かえようとしている。こうやって物語は回り出す。
2)INDIGO LIZARD(作曲+文:青柳拓次)
INDIGO LIZARD(藍色トカゲ)の話: 春に庭を歩いていた。植木鉢が散らばった一角で、土に塗れた藍色の鉢を見つける。僕は水場に持っていって、泥を洗い落とした。それを日に干すと、水に濡れていた濃い藍色は、乾いて白っぽく、渋いつや消しの藍色になった。その後、玄関に向かって歩き出すと、トカゲが植え込みから飛び出して来た。タイトルを探していた僕に現れた『ただの出来事』。
3)DIAMOND BLACK PIRANHA (作曲+文:坂口修一郎)
ハバナからブエノスアイレス、ニューヨークからエルサレム、リオデジャネイロからトーキョーを巡るあてどない妄想に浮んだ音の断片によるテクスチャー。原曲は3年以上前に構想され、これまでさまざまなバージョンが観客の前で演奏されてきた。最終的に、逸脱したロックンロールとラテン音楽からの影響をうけエレキギターによるテーマをフィーチャーしたアレンジが選ばれる。そして、うつろな目をした偽ピアニストのつめたい汗と9人分の沈黙が流れる中、このセッションは記録された。
4)VAGABOND(作曲+文:高木二郎)
褐色ノ世界ハココチヨク
深緑ノ海ハ ノスタルジア
海風ハ 彼方ヘト誘ウ
波ノウネリニユラレ 流レツイタ者タチハ
暖カナ時ヲ共有スル
辺境ニテ 戯レ
亡霊トナリ タダタユイ続ケル
5)Turkish Coffee 〜 Lowrider(文:坂口修一郎)
60年代に発表されたハービー・マンのオリジナル曲。原曲は中東の印象を色濃く反映したあやしいトラック。
かなり初期からのレパートリーであるこの曲を、ダブルフェイマスは子供のガラガラ、バリトンギター、アルトフルート、グロッケンシュピール、ジューハープ、などを使って再構築。 曲の頂点、フルートソロの途中に飛び出すのは西海岸のラテン・ファンク・グループ、WARのトラックからのキラー・フレーズ。やり始めた当時からこのフレーズ入りで演奏してきたが、なぜ入り込むことになったかは今となっては全くの謎。無意識が呼び込んだファンク・アンビエント。
6)Bukom Mashie (文:青柳拓次)
あれは、ローリングストーンズのトリビュートアルバムをスタジオで制作している時。
コントロールルームにあるラージ・スピーカーからこの曲を聞いた。
ブコムマシエ、恐ろしい、、、恐ろしい曲だ。僕らは呪いをかけられた。このまま何時間でも続けてくれ!
この時、『この曲をやるしか我々の道は無い』と思ったメンバーが数人居たハズだ。
それから、僕らは何度もブコム・マシエをライブで演奏を続け、アコーディオンとトランペットをフューチャーしたヴァージョンを考えついたという訳。
7)Dapah-Pa(作曲+文:広河 J.-民)
車の運転中にふとメロディが生れ、急いでテープレコーダーに吹き込んで、後に青柳に音符を叩き起こしてもらった。最初に、ディエゴ・リベラというメキシコの画家のイメージが浮かび、それから、彼が頭の中で散歩をしている様子を想像し膨らませた。コーラスものが欲しかったので、「ライライライ〜」とレニングラード風な声の太さで、あの太ったディエゴがお腹をゆらす、厚かましくも愛しい風貌を描いてみた。 前半のノンキなメロデイから、6/8になる後半のパーカッション(キューバのバタのアンサンブル)、素敵なトロンボーンのソロと聞いてゆくと、ディエゴってへんてこでおもしろい人だなあと思ってしまう。 テナーサックスの奏でるダパーパッ!というベースのラインが、そのまま曲のタイトルになっている。
8)Elephant Waltz (作曲+文:栗原務)
嗅覚の優れた9本の鼻を持つ巨象が、酒の河に飛び込んだ、ツマミはピラニアとトカゲ。頭痛に悩まされ悶えるわけよ!溺死する前に柔らかい寝床を思い出す…
9)Vamos a ir en bicicleta !(作曲+文:栗林慧)
学生時代、通学に自転車をつかっていた私にとって、その頃はどこへ行くにも自転車だった。急な登り坂もペダルをこぎ続け、登り切った後の下り坂での風がとても心地よかった。自転車ではしり始めると聞こえてくる音は10人いれば10通り。町の音、風の音、、、あなたにはどんな音が聞こえてきますか?この 曲も、そんな自転車ではしっている時に聞こえてきた音でした。
10)YUEN(作曲+文:細窪洋介)
今、僕らが暮らしている町のちょうど地球の反対側あたりにある、聞いた事のあるような砂漠の中の小さな町。少し大きめの馬や、首の短いキリン、色鮮やかな臭い鳥、刺さないサソリが人間と静かに暮らしている。その町の年に一度の祭りの前日に、携帯電話を腰にぶら下げた小さい馬に乗った浅黒い坊主のギター野郎がやってきた... !?
11)山のあなた (作曲+文:岡田 'KAYA' 真由美)
どっかの国の、まだ行ったことのない場所にある、山のあなた(彼方)のなほ遠く。そこに住む人たちの間で奏でられ、歌い継がれてきた土の香りがする民 謡、そんなイメージ。アコーディオン、ウクレレ、リコーダー、クラリネット、バルブトロンボーンが代わる代わる登場して、誰もが口ずさめる素朴なメロ ディを、少しずつ表情を変えながら繰り返します。そして、木霊のように響く太鼓の音。まだ見ぬ彼方への憧れと、どこの国ともわからない土地への郷愁、そんな感じで。
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