なんだか突然始めたブログだが、やり始めてみると思いのほか更新していたりして。
誰に頼まれた訳でもなく書く文章って面白いなとか思いつつ、今日は時間があるので、長めに書いてみた。
ちょっと前にこんなニュースを見つけた。ニュースの概要はニュースサイトを見てもらえばわかるが、全米ライフル協会(去年大ヒットしたドキュメンタリー”ボウリング・フォー・コロンバイン”で話題になったあの団体)が銃を規制する法案に賛成する企業、団体、報道機関、俳優や歌手などセレブの名前をリスト化したもの、つまりブラックリストがハックされ、公開されたということに関するものだった。今はもうそのリストは見れないようになっているようだが、ちょっと前までは普通に見ることができていた。で、暇つぶしにつらつらとそのリストを眺めていると、ニュースになっている通り驚くほどメジャーなハリウッドのセレブやアメリカのミュージシャン達の名前がずらりと載っている。その中に混じって彼女の名前を見つけたのだ。
その名の主マヤ・アンジェロウの”ミス・カリプソ”というレコードを買ったのは、もう随分前のこと。ダブルフェイマスで"Scandal in the Family"というカリプソの曲をカバーしているのだが、その曲がこのレコードにも入っていたからだった。この曲はいろんな人がカバーしていて、ずいぶんとバージョンがある。日本でも越路吹雪が”オーパパ”というタイトルで訳詞をつけて歌っていて、最近ダブルフェイマスで演奏するときは、この越路吹雪バージョンをよくやっている。
”ミス・カリプソ”は、マーティン・デニーなんかも出している"Scamp Records"から1957年に発売されていて、ジャケットがいいので迷わず買った覚えがある。内容も素晴らしくて、エキゾチック・サウンドの数あるレコードの中でも名盤と言えるようなものだと思う。それだけに今でも廃盤になることなく、CDも普通に手に入る。他にもレコードを出していないのかと思って探したりしたが、この一枚しかScampからはリリースはしていないようだった。その時点では失礼ながらただのエキゾ歌姫だと思ってたので、それ以上つっこんで調べたりはしなかった。
ところがひょんなところで名前を見つけたので、ちょっと検索してみたところ、でるわでるわ、すごい人だったのだ。彼女は詩人として最も有名で、詩集は日本語訳も出ている。ちょっとそのプロフィールを引用すると。。。
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マヤ・アンジェロウは1928年,アメリカのミズーリ州セント・ルイスで生まれた. アフリカ系アメリカ人である.彼女の活動は多様であり,作家,詩人,劇作家,俳優, 歌手,演出家,舞踏家.また,60年代のアメリカにおける黒人解放運動においては, 彼女は南部キリスト教指導者会議(SCLC)の幹部であった.カリフォルニアとアーカ ンザスで公立学校に通い,マーサ・グラハムに舞踏を学んだ.詩集及び著作には,『それでも私は立ち上がる』(1978),『朝の脈動について』(1993),『マ ヤ・アンジェロウ全詩集』(1994)など.自伝的作品に,『歌え、翔べない鳥たちよ』(1970)など.
(中略)
マヤ・アンジェロウのこの詩は,このキング師をリーダーの一人とする,アメリカ 60年代当時の黒人解放運動の精髄を,そのまま代弁している.すなわち,この詩は, 60年代のアメリカの歴史を背負った,黒人の方々の人権意識の高らかな宣言なのである.そしてこの詩はまた,殊に20世紀に入ってその活躍が目立って来た,リチャード・ライト(1908−1960)やラングストン・ヒューズ(1902−1967)など,多くの黒人の方々による文学の興隆の,その系譜の中で光を放つ.
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こんな感じ。本人のホームページでは詳細なプロフィールが出ていて、それによるとスポークン・ワードのアルバムをもう一枚出している。さらに、ワシントンDCで学校もやっているらしく、その学校は、
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マヤ・アンジェロウ・チャータースクール。この学校は正規の教育環境では学習できない子供たちのためのものです。小人数制で、生活をしていく上で必要な能力を養う職業訓練的な教育を行っています。
「学校における攻撃的な生徒への対応策
マヤ・アンジェロウ・チャータースクール訪問」より
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ものすごい偉い人じゃないか。。
こんな経歴からすると、全米ライフル協会のブラックリストには当然載るんだろうな、と思わせる内容。しかもクリントン元大統領の就任式では自作の詩を朗読したこともある、などなど。。。
ここまでくると、自分の無知が恥ずかしくなってくる。さらにジャケットを見ると、"Scandal in the Family"もクレジットに彼女の名前があるので、マヤ・アンジェロウが作詞も手がけている様子。今までてっきりもっと古いトラッドソングかなにかだと思い込んでいた。確かに"ミス・カリプソ"はカリプソのレコードとしては、音数も非常に少なく内省的な印象を与えるサウンドではある。でもなんでこのアルバム以降こういったレコードを作らなかったんだろうとかいろいろ考えてしまった。彼女ももう50年近く前に、生涯で一度だけ作ったカリプソのアルバムにこんなに影響を受けた日本人がいるとは思いもしないかもしれないけど。
初ポスト!
マヤ・アンジェロウの『歌え、翔べない鳥たちよ』は大学の文学の教材で3ヶ月かけてペーパー・バックで読んだことがある。
マヤの再婚相手だっけ(忘れた)?の性的虐待の話とかもあって、これ結構エグイ本なんだわ。
行っていたブロンクスの大学は典型的な黒人とヒスパニック
とアイリッシュというスゲエ人種構成だっもんで、まあブラック・カルチャーが強い学校というのはそういう本も教材にする訳ですよ。
まあ彼女を全米ライフル協会がマークするのは至極普通な感じもするね、正直メンタリティーが白頭巾ちゃん達と余り変わらないので(笑)
学生の時銃規制のボランティアに参加して、奴らにはさんざん嫌がらせされた人の話を聞いたり実際されたりもしたもんで!
ライフル協会とマヤ・アンジェロウ俺にはツボでした HIDE
Posted by: HIDEMUZIC | Sunday, 08 February 2004 at 03:59
コメントありがとう。
そうだったんだ。知らなかった。"Shame and Scandal"って一見コミカルな歌詞だし、そのまんまだと思ってた。。。実際はそれを笑い飛ばすような歌詞ではあるんだろうけど、自伝とかでふれられてる性的虐待とかのことを考えると実はもっと深かったりするんだろうか。。
自伝ちゃんと読んでみます。
Posted by: Sakaguchi | Sunday, 08 February 2004 at 05:28