ラフォーレミュージアムで今日までやっていたブライアン・イーノのマルチメディア・インスタレーション作品展、"77 Million Paintings"に行ってきました。ブライアン・イーノといえば、元ロキシー・ミュージックで、アート・リンゼイやジェームス・チャンスらを輩出した"NO New York"を始め、トーキング・ヘッズなどの音楽プロデューサーとして知られていますが、70年代後半からはそういった活動と平行してビデオアーティストとしても活動していて、今回はそちらの方の展覧会でした。
彼はもともとロック畑からキャリアをスタートさせていますが、ビデオアートをやりだした頃には「アンビエント・ミュージック」を提唱して現代音楽/環境音楽的な作品をいくつも発表していたりと非常に多才な人です。随分前に紹介したダニエル・ラノワなんかもこの時期イーノと一緒に活動したりしてました。"NO NY"しかり"アンビエント"しかり、本人は自分の事をノン・ミュージシャン(非音楽家)と呼んでますが、音楽/アートの境界線を超えて各方面にものすごい影響を与えた偉い人です。
今回の作品はコンピューターのアプリケーションとして作られていて、イーノ初のPCアプリケーション作品となっています。会場内にはたくさんプラズマモニターが設置してあり、ひとつひとつに抽象的なペインティングが映し出してあります。一見その絵だけが映っているように見えるのですが、しばらく見ていると少しづつ絵が別なイメージに変わって行く。かなり時間をかけてゆっくり変わって行くので、絵が動いているようには見えないんですがちょっと目をそらしていたりすると確かに変わっている。
絵画っていうのは時間に沿って進行していく音楽とは違い、基本的に切り取られた時間の中に存在するものなので、時間軸にそって変容していくこの作品を本人が「ビジュアル・ミュージック」だと呼んでいるのはよくわかります。無数にあるモニターにうつされているイメージは全て違っていて、その変わって行き方も完全にランダム。その組み合わせが77,000,000通りあることからこの作品名だとのこと。7千7百万とおりの変化っていったら普通の人間の感覚的にはほぼ無限って感じでしょうね。つまりいま、ここというその場で絵画が生成されるという作品なんですね。
流れている音楽も同じように、コンピューターのプロセッサを使っていろいろな音の断片がランダムに組み合わされて常に違う組み合わせの音楽が流れます。
こうやって書いていると、なにやらすごいものを見てきたように思えてきますが、イメージとしては高度なパソコンのスクリーンセーバーみたいなものというと分かりやすいかも.....。これ10年以上前にスーパーコンピューターとか使ってやられたらみんなひっくり返ったでしょうが、さすがに今の時代この仕組み自体にはそれほどインパクトはないかなと思います。だからといってつまらないと言ってる訳ではなくて、むしろそのインパクトの薄さに驚いたりします。このクオリティのものが普通に体験出来る状況がすごい。
その辺はイーノ自身も「家でCDを聴くみたいに鑑賞出来るアート作品にしたかった、、、云々」みたいなことを言っているのであえてそうしてるみたい。パソコンの性能が上がってきたからこそ実現出来た、とも言っているし。実際会場でもアプリケーションとして売っていて、自分のPCにインストールするとだれの家でも同じように再現できる。
展覧会として今回は開催してましたが、作品自体はマルチプルというかパッケージで流通できるところがイーノらしい、というか深いと思いました。その流通形態も音楽のシュミレーションになってるという。この作品はビジュアルとしての表現もさることながら、もっと全体的なアートを成り立たせている状況についての表現という感じでしたね。
ま、ちょっとかたくなってきたので、、アートついでにこういうくだらないのもひとつ。。。
一見ただの工事現場の様に見えるこの風景。これは地面に書かれたトリック・アートなんだそうです。地面に書かれた2次元の絵なのに立体に見える。これは写真で視点が決まってるから遠近法を逆手にとって、おぉーってなるけど、見る角度、位置によってはなんのことやら分からない絵になります(違う角度から見た下の地球の絵参照↓)。
遠近法ってのは後から学習して得られる世界の見方ですから、これは遠近法に毒された現代人の目にだけだまし絵として機能するアート作品。作者がどこまで意識してるかは分かりませんが、アイデアは面白いと思います。
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