以前は電車の中では必ず本を読んでましたが、最近車で移動することが多くてあんまり本を読まなくなってしまいました。一応僕も大学ではブンガク部というところに通っていたので、、学生の頃は年間100冊くらいは読んでたもんですが。。。実は僕はハタチくらいの学生の頃は読了した本と見た映画を手帳につけて、「年間本を100冊、映画は300本見る!」っていうのをなんの根拠も意味もなく目標にしてた時期があったんですねー。残念ながら、暗い青春でした。
そんな中この本はずっと気になってて読まないまま持ってて、年が明けてからようやく読むことができました。フランスの哲学者ロラン・バルトの「表徴の帝国」という日本論、そして「エッフェル塔」というパリの街を記号論的に読み解く超面白い本がありますが、それのやさしい現代東京版といった感じ。そんなこと一切知らなくてももちろん十分面白いです。欲を言えば、ページ数はあと2倍くらいあってもいいんじゃないかと思いました。このテーマでもっともっとたくさん読みたいような気がします。ところどころもっと突っ込んでほしいなーと思うところはありました。
とはいえ、抜群におもしろいのもまた事実。詳しくは実際に本を読んでもらうとして、現代の東京の地図に縄文時代の地勢図を重ねて下敷きにして見ると色んな事が見えてくる、というのがこの本の出発点です。
縄文時代今よりも地球が温かかったころは海面が今より全然高くて、東京の至る所は水没してました。渋谷区のあたりでいうと、現在の目黒川や渋谷川のあたりはもっとぜんぜん水浸しで渋谷の駅のあたりは水の中。代官山もちょうどUNITがある鎗ヶ崎の交差点付近は水の中で、かろうじてUNITの部分が水際なくらい。
で、東京はフィヨルドのようにギザギザに水際に迫り出していたんですが、その岬のように突き出した部分は聖なる土地とされていたようで、縄文期の遺跡などが沢山みつかるらしいのです。「ミサキ(岬)」という言葉に含まれる「サッ」っていう音は古代の日本語では魔術的な意味を持つ言葉の音だったそうで、「サカイ(境)」とか「サカ(坂)」っていうのは境界を示す特別なことばだったと、見慣れない不気味な世界との境界がそこにある、その境界を通じて異界との見えない通路が開かれているのが「サッ」という音のついた場所だったんだそうです。
そういう場所には今でもいろいろと意味のある建築物が建っていたりして、それが現在の東京を形作っている。たしかに代官山にもヒルサイドテラスのあたりに猿楽塚があったり古墳があったりします。東京タワーが建っているところもかなり霊的な場所だったりと、いろんなことが縄文地図をもとに明らかになります。
現代人が理性をもとに判断していると思い込んでいるような事も、実は歴史的、霊的な力に支配されていたりして、それは都市の無意識から由来している。西欧の都市というのは城壁で囲ってあったりして、人間の意思によって作り出された部分が大きく、田舎(身体)的な部分から切り離されたものが多いのに比べ、日本の都市(この場合は東京)は古代(縄文期、約5000年くらい前)からの記憶を実は色濃く残している。都市というのは人間の意識が作り出したものですから、都市の無意識に潜るというのは人の無意識に潜って行く作業と重なっていく。その作業を地図という記号をもとにたどって行くというのがこの本のテーマです。記号論、民俗学、文化人類学...いろんな要素を多分にはらみながら進んで行く東京散歩は、単なる雑学を超えた刺激があります。
そういえば、、このブログExophrenia(異国病)とかってのも、なんの特別な意味を持ってつけたわけじゃないんですが、僕の名字(坂口、異界の入り口)にどっか関係してるのかも知れないななんて思ったりして....。
考え過ぎ?ハイそうですね.....。(ポルトガルあたりからつっ込まれる前に自分で言っとく)
呼ばれたようなのでやってきました(笑
いやいや、そう思うんだろうなぁと思ったよ。
っていうか、オチが読めたって感じ?
いひ、なんつて。
でも、最近とくに思うのは、そうしたいくつもの偶然だか必然だかが重なっていって、シンクロニシティによって共鳴しながら、様々な現象を消化して再生していくことによって生まれてくることってものすごく多いんだなあということ。リスボンという街の無意識に溶けてなくなってしまいたいと夢想する今日このごろのあたしは思うのでした。
おもしろそうな本だね。
Posted by: kaya | Monday, 16 January 2006 at 10:46
おお、学生時代の恩師の本が!
槍ヶ崎は、本当に槍のように突き出したミサキですよね。UNIT があそこにあるのも現代の東京においては大きな意味があるというものです。
最近、この本の影響か、僕も自転車に乗りはじめました。ちょっと血中縄文濃度が上がってきたかも(笑)
>kaya さん
あっ、留学生!
Posted by: 佐藤剛裕 | Monday, 16 January 2006 at 14:19
kaya>
相変わらず、、、かわいげのない。。。
溶けてなくなってしまいなさい!
剛裕くん>
この本を読んでから東京を動き回るのが本当に楽しくなりました。新宿とか歩いてても「おぉ!たしかに下ってる!」とか。縄文濃度は僕もあがってますね。
UNITはあと1000年くらいすると、縄文からつながるヤリガ”サキ”にかつて存在した遺跡として発掘されたりして。。
Posted by: sstp | Thursday, 19 January 2006 at 22:51